石西礁湖におけるこれまでのオニヒトデの発生状況の詳細
(平成14年度自然再生推進調査報告書抜粋)
沖縄県などにおけるオニヒトデ゙駆除の実績記録は、ほぼ正確にオニヒトデの集団の動態を示し、大発生の経過をそれによってたどれるものと考えられる(Yamaguchi 1986)。石西礁湖ではオニヒトデ大発生の当初から地元団体による駆除が行われている。これらの駆除実績を表4-7-1にまとめた。報告書によって駆除海域の記録方法は異なっていたため、本報告では最も荒い海域区分に従って、石西礁湖南西部(西表島-新城島東間)、石西礁湖中央部(小浜島-黒島-竹富島間)、石西礁湖南東部(竹富島南-石垣島南間)とし、他に西表島西部(崎山~浦内)、鳩間島周辺、名蔵湾も加えた。また、単位努力量当たりの駆除数によってオニヒトデ密度を比較するため、一日一人当たりの駆除数も算出した。
1970年3月と10月には海中公園設定のための生物相調査が石西礁湖全域の54地点で行われた(環境庁・井田 1970)。この報告書には、「当水域ではオニヒトデは見出せず、現時点ではその食害の恐れはないものと判断される」と記されていることから、1970年の時点で石西礁湖ではまだオニヒトデの大発生が起こっていなかったものと思われる。しかし、この頃から石西礁湖の北西側に位置する鳩間島周辺ではオニヒトデ増加の目撃情報があり、そのため竹富町では駆除の必要を迫られ、1972年度に19,745匹(一日一人当たり153.1匹)、1973年度に38,255匹(一日一人当たり273.3匹)のオニヒトデを駆除している。また、海中公園センターが独自に行った調査によると、それまで石西礁湖でオニヒトデの集団は見られなかったが、1972年に石垣島南に張り出している堡礁の入口にあたる釜口(ハガマグチ)近くの内礁で、枝状ミドリイシの枝間に直径12~20cmの小型のオニヒトデが100㎡に1個体の割合で散在し、3名で30分間に17個体を発見したとしている(環境庁 1974)。そして、石西礁湖南東部(竹富島南沖)でもオニヒトデの集団が見られ始めたことから、1974年度にはこの海域で8,886匹(一日一人当たり68.9匹)のヒトデが八重山漁協によって駆除されている。
Fukada, T. & K. Okamoto (1976)によると、1974年~1975年3月の時点に石西礁湖でオニヒトデの高密度集団が見られたのは、鳩間島周辺と竹富島南方(竹富島南~ウマノハピー内縁)のみであるとされている。そして、1974年6月から1975年3月にかけて、わずか9ヶ月のうちに、調査地点15地点のうち、オニヒトデが出現した地点数が5から13地点に増加し(2.6倍)、10分間の遊泳探索中に出現したオニヒトデの数は21匹から131匹へと急増した(6.2倍)としている。さらにサイズ分布を見ると20~29㎝の個体で大部分が占められている。このサイズの個体は、生後2年半~3年弱たったものであると推測されることから、この個体数の急増を生み出したのは、大量に定着、生残した1972年生まれのオニヒトデによると解釈することができる。
1976年度には鳩間島周辺の駆除数は555匹(一日一人当たり9.0匹)に減少したが、オニヒトデ集団は石西礁湖中央部に広まり、6,524匹(一日一人当たり30.2匹)が駆除されている。駆除されたオニヒトデの平均重量を見ると、前年の0.90から0.60に減少していることから、この年に大量の新規加入があったことが推測される。最近の研究によると石西礁湖では南東部から北西部に向けての卓越した流れがあることが分かっており、石西礁湖南東部で大発生したヒトデの卵がこの逃れに乗って石西礁湖中央部に拡散し、分布域を広めていったものと考えられる。
その後、石西礁湖中央部と南東部でオニヒトデ個体数は増加し、1978年度の一人当たり駆除数は、それぞれ110.5匹と226.9匹になった。そして、1981年度には一人当たり駆除数が石西礁湖中央部で603.5匹、南東部で493.2匹と、それぞれ過去最高値を記録した。
駆除されたオニヒトデの平均重量を見ると1974年度以降0.49~0.90kgで推移していた重量が、1980年度には0.34kgに減少していることから、石西礁湖内で大量発生したオニヒトデの産卵によって新規加入量が増加し、個体数が大幅に増えたことが推測できる。
1983年度以降、石西礁湖中央部と南東部でのオニヒトデ駆除数は減少したが、鳩間島周辺で再び37,820匹のヒトデが駆除され、さらに西表島西部にも被害が広がり37,510匹が駆除されている。
1986年以降オニヒトデ大発生は終息に向かったため、大規模な駆除事業は行われなくなったが、大きな被害を被った石西礁湖のサンゴ群集は順調に再生した。しかし、1998年夏の大規模なサンゴの白化現象で多くのサンゴが死んだのに続いて、2000年には再びオニヒトデ大発生の兆候が確認された(環境省 2001)。2002年度には、八重山漁協・八重山ダイビング協会などにより1,435匹(石西礁湖中央部:657匹、南東部:537匹、名蔵湾:178匹、その他63匹)が駆除されている。
